翠天雑記帳 雑文


バレンタインデー/2000年2月14日(月)/No.14

実は私の誕生日。幼少の頃からバレンタインデーとしては良い思い出は皆無 で、母親からチョコを今年ももらってしまいました…。まだ電話してません。 妹からemailが来て、きちんとありがとうと言わないとだめだよと言われました。 …。何が悲しゅうてこの歳でおかんにチョコもらって、ありがとう言わなあかん ねん。義理チョコの風習死すべし!はあはあ。閑話休題。

お菓子屋の陰謀ってのは専ら正しいところですが、最早少女漫画でも定着し たこの「女の子が告白する日」というのは、日本の良い風習なんじゃないでしょ うか。今日はそんなイベントには全く縁のない私の、中学の頃の話をしたいと思 います。

先生がまとめ上手だったのか、私が中学1年の時のクラスは異様に仲の良いク ラスで、その年頃なら男女は会話もあまり無いって感じが、当時は普通だったの だが、うちのクラスは違っていた。当然バレンタインデーは異様に盛り上がるイ ベントだったらしい。女子には。そしてもてもてのごく一部の男子にも。当時か らそんなイベントにはまるっきり縁の無かった私も、諦めとか己の分をわきまえ るというか、そんな境地に辿り着くにはまだ早く、誰かくれないかなーとか、下 駄箱に…とかそんなものを想像しながら学校に行くのである。そしたらである。 机の中に包みが…。?!?。いたいけな少年ははやる心を抑えて机の中から包み を取り出したのである。…間違いない。チョコだ。人生10うん年やっとこんな幸 せが…。

と喜んだのもつかの間。回りの男子がぞくぞくと机の中からチョコを取り出 しているのだ。な、何事か。つまりこうである。イベント好きの女子がクラスの 女子全員で一人一つづつクラスの男子にチョコを配るというイベントを考え出し たらしいのだ。色んな事を考えるものだ。いやその好意だけはありがたく頂いて おこう。

詳しくは知らないのだが、誰が誰に配るかは苛烈を極める争奪戦だったに違 いない。もてもての格好いい男の子は何処のクラスにも一人二人は居て、当然本 命チョコとして、しかもクラスのイベントだからと公然とチョコを渡せるのだか ら。本命チョコはどうやら堂々と渡すなんてこともあったらしい。戦争には大義 名分である。だがまあそれはどうでもいい。問題はその他大勢の私らである。

それはそれでそっちも決めるのは大変だったらしい。何しろ男子に変な期待 を抱かせてはいけなく、嫌がられてもいけなく、今まで通りの人間関係を維持し ながらチョコを渡さなければいけないのだ。義理チョコだって中学1年の少年少 女にしてみれば大問題なのである。それはそうとしても、当時母親のプ レゼント以外のチョコをもらったことの無い私である。たとえイベントの一環で あれ、同じ歳頃の女の子からチョコをもらうなんて事は無かったのだ。つい誰が 送ったのか知りたくなるのは、当然といえば当然の反応じゃないか。誰がその行 為を責められようか。私のチョコには名前が書いてなかったのだ。本命なら手紙 の一つも入っていようというものである。

放課後である。男友達連中数人と、仲のいい女子達に誰が企画したのか、と かその辺の裏事情を説明してもらいつつ、聞きたい話題は誰が誰に送ったのか? である。義理が大半としても本命だって中には潜んでいる。話は大いに盛り上がっ た。突然解答は示されるものだ。「おおたき君に送ったのは××ちゃんだよ」仮 に花子さんとでもしておこう。彼女はクラス中で1、2の男子不人気を争う女の子 だったのである。「えー」私は露骨に嫌な顔をしたに違いない。盛り上がった中 での発言でちょっとオーバーにアクションした、なんて言い訳もできるのかもし れない。人生で初めて同じ年頃の女の子にもらったチョコが、よりによってあの 子だったなんて。回りの男友達もにやにや笑っている。

ところが廻転は突然やってくる。丁度クラスに入ろうとしていたその子がそ こに居たのだ。気まずい沈黙が流れる。その子はちょっと笑って入りかけたクラ スから出ていった…。その子だって私に渡したくて渡したという訳では無いだろ うに。それがよりによって嫌がってる相手を見てしまうなんて。当時私は優等生 で誰にでも優しいという感じだった。誰が誰に送るかの会議では、私なら誰が送っ たか分かっても、受け取ってくれると考えたのかもしれない。そんな期待を私は 最悪の結果で裏切ってしまったのだ。もっと静かに話していたら、ただちょっと がっかりするだけだったのかもしれない。でも現実はシビアだ。その子には結局 謝らず仕舞いだった。バレンタインチョコなんて縁のない私が、もし今日思い出 すとしたら、その時のひどく苦かったチョコの味だ。

本来ならここでやめるのが話としては余韻もあっていいのかもしれない。で も雑文なんだから続けてしまおうか。

もし、将来私がチョコをもらう様な事があったらである。義理でもそれなり の意味は含まれているのである。ましてや本命のチョコレートには、ただの物じゃ ない特別な意味が含まれているのだ。だから受け取るのか受け取らないのか、そ れははっきり態度で表さなきゃいけないと思う。なあなあで受け取ったりしたら 失礼なんだと思う。そりゃもう9割方喜色満面でもらってしまうと思うのだが、 ごめんなさいと言う様な事があったら、その時はきちんともらえないと言おうと 思う。その気も無いのに受け取ったりしたら、それは逆にとってもひどいことな んだと思う。